カテゴリ:books( 242 )

僕は、そして僕たちはどう生きるか/梨木香歩

梨木さんにはめずらしい中2の少年が主人公。
でも、コペルニクスをもじって「コペル」と呼ばれてるし、母は大学教授だし、父は母の赴任先に息子を置いて付いて行っちゃうし、おじさんは染色家だし、親友は引きこもってるし・・・。

タイトルからしても最初はエッセイみたいなものかなぁと思った。
普通に小説だったけど、でも思想的。

開発による環境破壊や、素人を使ったレイプまがいのAVや、戦争や徴兵。
「普通」という言葉の恐ろしさ。
人と上手くやっていけなくて逃げ出しても、人は一人では生きていけないんだということ。
意味もわからず遠ざけられたことにたいする悲しみ、でも、その理由を心の深いところでは気づいていたり。

そんなふうにいろいろ考える会話が、森のように植物に囲まれた昔ながらの一軒家で交わされる。
頭の中に浮かぶしっとりとした濃い緑の情景が、痛みを持つ会話を和らげてくれるような気がする。


最後の方で出て来た、一時期政治家が
「今の若者はなってないから、徴兵制度を復活して軍隊のような訓練をした方が良い」って話に、主人公の少年のお母さんは、
「制度が回避できないなら、「良心的兵役拒否」が出来るような条項を入れてもらう」
ってことを言っていたらしい。
この話って、「自己責任」とかが言われてたK総理のときで、例会でもこのこと話題になったなぁって思い出した。
「うちは娘だから」
って友だちに
「本当に徴兵制度がとられたら、今の時代は女性にもあるよ」
って言ったのを覚えてる。
この時もこの「良心的兵役拒否」って言葉を知らなかったから、今度、これに関する本を読んでみよう。
梨木さんが参考にした本は、図書館にはなかったけど。
本当に。
「こんなことは嫌だ。間違っている」
と思っていても、大きな力でいつの間にか押し進められていることって本当に多いと思う。

タイトルの「僕は、そして僕たちはどう生きるか」は、精神的に弱くて兵役を免れ、終戦まで一人洞窟で隠者のように暮らした人が
「そのとき何を考えていましたか」
って質問に答えた言葉だけど。
常に考えていなきゃいけないと思う。
自分に何が出来るのか、どう生きるのか。
実行は、また別のことだけれど。
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by liddell423 | 2012-08-26 15:43 | books

神様のカルテ 2 /夏川草介

もう三巻も出てるんですね。
映画はまだ観てないけど、とりあえず二巻を読みました。

365日24時間営業の一止の病院に新しい血液内科の医師が赴任する。
進藤辰也は一止の大学の同期だが、「定時に帰ってしまう」「電話が繋がらない」など、看護士から不満が出るようになる。
そして、ゆっくり休むことも出来ない日々は続き、ある日古狐先生こと副部長先生が倒れる。

医者は総てを捨てて患者のために尽くさなければならないのか。
そんな疑問と身近な死の物語。
人が死ぬってことは大切な人と別れること。
治療不可能になっても医者に出来ることはあるのではないか。
変人の一止がまた頑張る。

この本はいつも医療ドラマってより人間ドラマだ。
職業が医者ってだけ。
舞台が病院ってだけ。

後半、泣きながら読んだけど、心が温かくなる。
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by liddell423 | 2012-08-22 17:54 | books

f植物園の巣穴/梨木香歩

f0089775_0273679.jpg前に買っていたけどなかなか読めずにいた。
わかりにくくて、一気に読みたかったし。

主人公はf街の植物園に転勤になる。
夜中に歯が痛み、明日は歯医者に行こうと思う。
その歯医者の奥さんが犬だったり、下宿先の大家の頭が雌鳥になったり、植物園に神主がお祓いに来たり・・・。
不思議なことがどんどん起こって、まるで夢の中の様で、くらくらする。
読んでいる間、夢を見ているような状態。

話はどんどん混沌としてきて、夢の中でさらに夢見ているような感覚に。
巣穴の奥、まるで異界を旅するように、「千代」という存在を探し求める。
「千代」はねえやの名前なのか、死んだ妻の名前なのか。
そして、忘れようとしていた悲しみをはっきりと思い出していく。


読み終わって、
「やっぱり夢だったか、良かった」
って思う。


植物園の話だから植物が出てくるのは当たり前なんだけど、「シュウカイドウ」とか「竜の髭」とか、他の物語で知った植物の名前が出てくると嬉しくなる。
たくさん出てくる名前のすべてを思い出すことが出来なくてじれったいけど。
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by liddell423 | 2012-08-19 00:42 | books

裏庭/梨木香歩

f0089775_126361.jpg久しぶりに読み返してみた。
物語が二層になっているってことしか覚えてなかったし・・・。

照美の両親はレストランを営んでいて忙しく、彼女はいつも夜遅くまで一人の時間を過ごしていた。
時々遊びに行っていた友だちの家で、その子の祖父と仲良くなりいろいろな話を聞かせてもらうようになる。
照美も小さい頃はこっそり忍び込んで遊んでいた、バーンズ家の裏庭の話。
照美の知恵おくれの双子の弟は、そこで亡くなっていた。

学校を休んでバーンズ家に忍び込んだ照美は、大鏡の前で問いかけられる。
「フー アー ユー」
「テルミー」
「アイル テル ユー」
照美の名前こそが「裏庭」への合い言葉だった。

照美は裏庭で「テルミー」となり、スナフ、テナシと旅をする。
みっつの街に散らばったひとつ目の竜の化石を、またひとつに戻す旅。
街ごとに化石を守る三人の魔女に、照美は傷について教えられる。
忘れていた記憶が鮮明になり、物語は照美の母、祖母へと繋がる。
照美の旅の終わりは、バーンズ家の復活であり、照美の家族の再生でもあり、照美と母、母と祖母の関係をも新しくした。

高い塀に囲まれた今では住む人もない洋館。
そこにこっそり潜り込んで遊ぶ子どもたち。
三代の子どもたちのそれぞれのその庭との関わり。
鏡の中の「裏庭(バックヤード)」での冒険。
ばらばらの登場人物が実はそれぞれに繋がっていて、見る角度を変えることでその人を新しく発見できる。

この時期の梨木さんは母親と上手くいかない娘の話が多かったなぁ。
女の業みたいなの。
新しい「雪と珊瑚」は子どもを愛せない母の話で、時代なのかなぁと思った。
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by liddell423 | 2012-08-18 01:56 | books

雪と珊瑚/梨木香歩

f0089775_9491270.jpg21歳の珊瑚は赤ん坊の雪をベビーカーに乗せ、途方にくれていた。
お金はない。
働かなければ生きていけないが、子連れでは仕事もできない。
偶然入った露地で一枚の張り紙を見つける。
「赤ちゃんお預かりします」
一人暮らしの老婦人くららと出会い、雪を預けて働き始める。
出会いは繋がり、世界は新しくなる。
自分を捨てた母へのイメージも変わる。

美味しそうなご飯の話って、なんでこんなに幸せな気分になれるんだろう。
途中、何度もうるってきたけど、ずっと温かい気分が続いていた。

やさしい、おいしいご飯が食べたい。
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by liddell423 | 2012-08-15 07:50 | books

マリリン・モンローという生き方/山口路子

f0089775_2249282.jpg

「劣等感を持つ女は美しい」

先日映画を観てから、いろいろ伝説はあるけど本当はどんな人なのか気になってた。
映画やニュースでオンタイムで見ていた気がしてたのに、彼女が亡くなったのは1962年だった。
どれだけ印象の強い人なのかがわかった。

白い肌、白っぽい金色の髪、甘えた話し方、モンローウォーク。

頭が空っぽのセックスシンボルのマリリンは、学歴に対するコンプレックスでかなりの読書家だったらしい。
新聞とかも読んでたみたいだし。
「読んでたふり?」
でも、彼女が残した言葉からは、読んでいなければ出てこないような表現や、引用がされる。
ウイットにとんだジョークも感が良いんだなぁと思う。

あんな風に必死で生きて、真面目に悩んで、些細なことで傷ついてたら、強くは生きていけないだろうな。


「女は女らしくいなくちゃ」

そうですね。
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by liddell423 | 2012-05-20 23:01 | books

がらくた/江國香織

母との旅先で出会った美しい少女が気になる柊子。
彼女を束縛しない夫は、彼女だけを愛していると言いながら、興味を持った女を抱く。

美しく同年齢の少女からは浮いてしまうミミ(美海)。
離婚後、短い恋愛を繰り返す両親を冷めた目で見ている。

いつもイヤフォンで音楽を聴いているミミの、この言葉が、自分と同じで嬉しかった。
MDプレイヤーは、私が肌身離さず持ち歩くものの一つだ。音楽があれば退屈しないし、一人でいても孤独そうに見えない。〜巨大な看板とかゲームセンターの騒音とかビラ配りの人とかで溢れたあの不穏な街が、音楽を聴きながら歩くと、まるで映画みたいにきれいに見えるのだ。〜


そして「がらくた」っていうのは、歳を重ねるごとに、捨てられずにいる「思い出」とか「感情」とか、そんなものなのかなぁ、と思った。
ほんの一瞬ではあるが強く、私は自分がミミをまぶしいと思ったことに気づく。ミミの持っているものではなく、持っていないものによる、それはまぶしさだ。


江國さんの描く世界は、自分とは重ならないんだけど、なんかすごいなと思う。
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by liddell423 | 2012-04-22 23:29 | books

もったいないばあさん/真珠まりこ

f0089775_1653758.jpg今月の例会は「もったいないばあさん」
担当は大好きなSさん。
仕事を休ませてもらって行ってきました。


「絵本の感想ともったいないことについて、思ってることを教えてください」

おばちゃんたちの集まりだから「もったいない」って思ってること、いろいろありました。
そして、思っていながらなかなか実践は出来ないのもおばちゃんたちなのでした。

でも、この絵本を読んで「もったいない」って言葉が定着して、恥ずかしがらずに「もったいない」って子どもたちが言えるようになれば良いかなと思います。
大事にするってことは、物でも人でも自然でも、とても大切なことだと思うから。


例会で、真珠まりこさんの「もったいない」以外のかわいい絵本に出会えました。
「もったいない」シリーズでも世界や自然について啓発してる本があることも知りました。
たくさんの人たちに届けば良いなぁと思います。
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by liddell423 | 2012-03-07 16:55 | books

ジェノサイド/高野和明

f0089775_21212739.jpg本屋さんで平積み。
今話題のエンターテイメント小説。
SFかな?

久しぶりにすごく面白くて、最後は一気に夜中までかかって読んだ。

物語はホワイトハウスから始まる。
大統領への日報の中の「コンゴで新種の生物発見」の知らせ。
そして、コンゴでの寄せ集めの傭兵たちによるピグミー族殲滅「ガーディアン作戦」が発動される。
ポルトガルの病院では、八歳の子供が「肺胞上皮細胞硬化症」という遺伝病の末期の状態を迎えようとしている。
日本では、突然の父の死によって特効薬の研究を引き継いだ大学院生の日常が危険な日々に変わる。


読んでいて、吉田秋生の「夜叉」を思い出した。
傭兵と天才が出てくる辺り。
あれが好きな人ならきっと好きだと思う。

ハリウッド映画のようなスケール。
でも、作者が日本人だから日本人がきちんと描かれてて、日本の学生が必死で頑張ってるのがうれしい。


「ジェノサイド」は大量虐殺のこと。
この小説の中でも新種の生命を抹消するためにひとつの部族を消そうとするんだけど、アフリカでの現実や過去の日本の過ちやホロコーストや、いくつもの「ジェノサイド」を再認識することになる。
人類がホモサピエンスへと移行したことも「ジェノサイド」の結果なのかもと。
人間、は同じ種を些細な理由で殺せる残虐な生き物なのだと。

でも、一方で、自己を犠牲にし他者を守ろうとする人間もいるんだと。


ハッピーエンドじゃないと辛いけど、あまりにも上手くいって出来過ぎな感じもしたかな。
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by liddell423 | 2012-02-29 21:17 | books

羊くんと踊れば/坂井希久子

f0089775_2152834.jpg「コイカツ」の作者さんです。
面白かったし、どんどん読めたけど、それだけかな。

言ってしまえば恋愛小説。
でも、亡くなったおじいちゃんのお腹に入れ墨があってその謎を解いていったり、戦争の理不尽さが描かれていたり、新しい感じなんですけど。
戦争のことを訴える描写もしっかりしてるし、エロチックだし、なんか惜しいなぁ。
タイトルなんて、読み終わってもよくわからないし。

でも、「コイカツ」も読んでみよう。
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by liddell423 | 2012-02-19 21:57 | books