父が逝った日

2月9日土曜日。
本当は仕事だけど、うっかり出席の返事をしたので、休んで従兄弟の結婚式に参列した。
父と母とパパと一緒に。
元高校球児の従兄弟は友達も体育会系で、盛り上げ上手ですごく楽しい披露宴だった。
久しぶりに母の弟とも会って、父とパパと三人、式の前から楽しそうに飲んでいた。
「なかなか、三人で飲む約束を果たせないな」と言いながら。
「帰りにうちに寄ってくれないかなぁ」とパパは言っていたけど、父はその後小倉で予定があるし、母は体調を崩していたので
「じゃあ、またね」
と、家の前でタクシーを降りた。
いつものように12時過ぎに寝た。
1時過ぎ、パパに起こされた。
「お母さんから電話があった。お父さんが風呂で溺れたらしい。すぐ出るぞ」
まだ頭が寝ているせいか、現実だと認識できない。
途中で電話が入り、労災にいるというのでそちらへ向かう。
救急の入り口は薄暗く、母は酔った男の人に励まされていた。
しばらくして処置室から出てきた医師の口振りは、可能性の低さをにおわせていた。
数分後、部屋に呼ばれ、まるでドラマの様に死亡宣告が行われた。
父にすがりついて
「お父さん!いやよぉ。起きて!!」と泣く母。
取り乱す母を見るのは、たぶん最初で最後だろう。
お湯に浸かっていた父の体は暖かく、柔らかく微笑んだ口元は、ただ眠っているだけにしか見えなかった。
事故死なので、検死が行われた。現場検証も。
まだ、父の死さえ実感できない母に
「ご主人が帰ったのは何時頃?気が付いたのは何時?」
調書に書かなきゃいけないんだろうけど、時間がきちんと言える人なんているんだろうか。
看護師さんが出てきて、葬儀社を決めて父を連れて帰る段取りをするように言われた。
そういうことももう決めなきゃいけないんだ。
真夜中だったけど、父の会社の人に来てもらって、相談して、実家の近くにした。
葬儀社を霊安室で待った。
父の顔に白い布がかけられているのがいやでたまらなかった。
祖母をショートステイに預けていたので、祖母の部屋に父を寝かせた。
白い布は取った。
白い顔で胸の上で手を組んだ父は、寝息さえ聞こえるようで、じっと見ていると胸が上下しているような錯覚を覚えた。
体に水が入ったせいか、ずっと鼻血が出ていた。
一週間くらい前に、転んでおでこに傷を作っていたので、その顔でにっと笑って鼻にティッシュを詰めていると、いたずらっ子みたいで可愛かった。

映画やドラマですぐに涙が出るから、親が死んだとき泣かないかも?と思っていたけど、その心配はいらなかった。
哀しいとか淋しいとかの感情の前に、何かを思い出すわけでもないのに、涙はただこぼれて止まらなかった。
眠いとかお腹が空いたとか全然思わなかった。
すべての感情は麻痺していた。

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by liddell423 | 2008-02-24 09:39 | days