僕は、そして僕たちはどう生きるか/梨木香歩

梨木さんにはめずらしい中2の少年が主人公。
でも、コペルニクスをもじって「コペル」と呼ばれてるし、母は大学教授だし、父は母の赴任先に息子を置いて付いて行っちゃうし、おじさんは染色家だし、親友は引きこもってるし・・・。

タイトルからしても最初はエッセイみたいなものかなぁと思った。
普通に小説だったけど、でも思想的。

開発による環境破壊や、素人を使ったレイプまがいのAVや、戦争や徴兵。
「普通」という言葉の恐ろしさ。
人と上手くやっていけなくて逃げ出しても、人は一人では生きていけないんだということ。
意味もわからず遠ざけられたことにたいする悲しみ、でも、その理由を心の深いところでは気づいていたり。

そんなふうにいろいろ考える会話が、森のように植物に囲まれた昔ながらの一軒家で交わされる。
頭の中に浮かぶしっとりとした濃い緑の情景が、痛みを持つ会話を和らげてくれるような気がする。


最後の方で出て来た、一時期政治家が
「今の若者はなってないから、徴兵制度を復活して軍隊のような訓練をした方が良い」って話に、主人公の少年のお母さんは、
「制度が回避できないなら、「良心的兵役拒否」が出来るような条項を入れてもらう」
ってことを言っていたらしい。
この話って、「自己責任」とかが言われてたK総理のときで、例会でもこのこと話題になったなぁって思い出した。
「うちは娘だから」
って友だちに
「本当に徴兵制度がとられたら、今の時代は女性にもあるよ」
って言ったのを覚えてる。
この時もこの「良心的兵役拒否」って言葉を知らなかったから、今度、これに関する本を読んでみよう。
梨木さんが参考にした本は、図書館にはなかったけど。
本当に。
「こんなことは嫌だ。間違っている」
と思っていても、大きな力でいつの間にか押し進められていることって本当に多いと思う。

タイトルの「僕は、そして僕たちはどう生きるか」は、精神的に弱くて兵役を免れ、終戦まで一人洞窟で隠者のように暮らした人が
「そのとき何を考えていましたか」
って質問に答えた言葉だけど。
常に考えていなきゃいけないと思う。
自分に何が出来るのか、どう生きるのか。
実行は、また別のことだけれど。
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by liddell423 | 2012-08-26 15:43 | books