ヘウ゛ン/川上未映子

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「ダ・ウ゛ィンチ」で蒼井優ちゃんが紹介していた本。
「雷桜」はすっきり読めたけど、これは苦しかった。
14歳のいじめられっこのお話だったから。

「僕」はクラスメートの二ノ宮たちに日常的にいじめを受けている。
ある日、ふで箱の中に手紙が入っていた。
〈わたしたちは仲間です〉
手紙は同じ様にいじめられている女子のコジマからだった。

「僕」は父が再婚した「母」と暮らし、父はほとんど不在。
コジマも母が再婚し、貧乏だった前の父を忘れないため、身なりに構わず不潔にしている。
そんな娘をそのままにしているコジマの母に対し、「僕」の母は血の繋がらない息子とほぼふたりで普通に暮らしている。
ふたりで葬式に行ったときや、「僕」のいじめを知ったとき、斜視は手術すれば治るかもと相談されたときとか、親子関係じゃないけど、良い感じの親身になってくれる大人な気がした。


この小説が異質なのは、「僕」と百瀬の会話なんだろうな。
二ノ宮の一番近くにいて、わりといじめを見ているだけの彼に、「僕」はいじめをやめてほしいと話す。
ところが百瀬は
「なぜ?」
と問い返すのだ。
彼の理屈がもっともらしくて、納得しそうになる。
でも所詮それは強者の理屈で、より強くいなければ、いつまでもそんなことは言ってられない。
愛する妹を守りきれなかったとき彼はどうするんだろうか。


特別であろうとするあまりやせ細っていく「コジマ」
斜視を手術し、新しい世界を手に入れる「僕」

今はひとりでも、いつか世界を共有できる誰かが現れるよ。


「コジマ」が「ヘウ゛ン」と言った絵はシャガールかなぁ。
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by liddell423 | 2010-10-04 22:44 | books